2025.12.07

犬の僧帽弁閉鎖不全症の進行を遅らせることはできる?

僧帽弁閉鎖不全症は、犬の心臓病の中で最も多い疾患です。
身近で経験された方も多いかもしれません。
高齢の小型犬に多く見られる疾患で、進行すると心不全(肺水腫など)を起こし、治療が困難になる場合もあります。

この記事では、犬の僧帽弁閉鎖不全症の進行を遅らせるための適切な対処法や、ご自宅での注意点などを詳しく解説いたします。
ぜひ、最後までお読みいただき愛犬が僧帽弁閉鎖不全症になった際に何をすればいいのか知見を深め、日常にお役立てください。

犬の聴診をする女性獣医師

犬の僧帽弁閉鎖不全症とは

僧帽弁閉鎖不全症は、心臓の左心房と左心室の間にある「僧帽弁」が変性し、しっかり閉じなくなることで血液が逆流して起こる病気です。
進行すると心臓への負担が増え、最終的には心不全(肺水腫など)を引き起こす怖い病気ですね。
僧帽弁閉鎖不全症は小型犬に多く、特に以下のような犬種に認められます。

  • チワワ
  • キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル
  • マルチーズ
  • シーズー
  • トイプードル

中年齢から高年齢の犬で多く認められ、遺伝的な要因も関与しているとされています。

どんな症状がでるの?

僧帽弁閉鎖不全症の初期は症状がでないことが多いです。
そのため症状から早期発見するのはとても難しいです。
病気が進行すると以下のような症状がでてきます。

  • 吐き出すような咳をする
  • すぐ疲れる(運動不耐性)
  • 呼吸が早くなる、苦しそうになる
  • 舌が紫色になる(チアノーゼ)
  • 急に倒れる

僧帽弁閉鎖不全症が悪化すると、血液のうっ滞が悪化し肺に水がたまる「肺水腫」を引き起こすことがあります。
このような状態になると、治療をしても回復せず亡くなってしまう場合もあるため注意が必要です。
僧帽弁閉鎖不全症は早期発見し、適切な対処で病気の進行を防いでいくことが重要となります。

芝生をかける犬

僧帽弁閉鎖不全症の進行を遅らせるポイント

犬の僧帽弁閉鎖不全症は、ACVIMによる病期分類が一般的です。

  • ステージA
  • ステージB1・B2
  • ステージC
  • ステージD

のステージに分かれ、病気が進行していくとステージも上がっていきます。
この病期を正しく把握することで、治療の開始時期や治療内容を目安にすることができます。
犬の僧帽弁閉鎖不全症が進行を遅らせるポイントを、それぞれ詳しく解説していきましょう。

早期発見・定期健診

若くて健康な状態でも、年に1〜2回の健康診断を受けるようにしましょう。
聴診で心臓の雑音がないか確認し、定期的にレントゲン検査・超音波検査で心臓の状態を確認することも重要です。
心臓の雑音が聴取されたら、心拡大に進行していかないか経過を見ていきます。
心拡大を早期に見つけることで、薬の開始の最適なタイミングが分かります。

適正な薬物治療

心拡大が認められるステージB2からは投薬開始が勧められます。

中でもピモベンダンは現在の僧帽弁閉鎖不全症で中心となる薬です。
心筋の収縮力を高めて、血管を拡張させる作用があります。
ステージB2以降の犬に投与すると、心不全発症を約15ヶ月を遅らせる効果が報告されています。

食事

食事も心臓病の進行を遅らせるためには重要です。
塩分を控えめにすることで、むくみを予防し循環の負担を減らします。
食べ過ぎによる肥満は心臓への負担を増やすので注意が必要です。
また犬の状態によっては心臓用療法食が病気の進行を遅らせるのに有効なこともあります。
療法食を始める際は、かかりつけの獣医師に相談しましょう。

安静と適正な運動

無理のない軽い散歩程度の運動は、筋力も維持し心臓にも良い影響となります。
疲れすぎたり息切れしたり、咳がでてしまうような運動は避けましょう。

ストレスを避け、穏やかな生活を整えることも心臓への負担を減らします。

口腔内ケア

歯周病菌が心臓の弁に感染を起こし心臓病の原因になることがあります。
毎日の歯磨きにより口腔内を衛生的に保ちましょう。
また歯周病が進行している際には麻酔下での歯石除去を実施することもあります。

ただし心臓病のある犬では、麻酔リスクがあるため注意が必要です。

外科手術

僧帽弁閉鎖不全症は外科手術で治療が可能な場合もあります。
うまくいくと、投薬も行わずに日常生活を送ることができるようになります。
一部の専門施設でのみ実施可能なため、まずはかかりつけの獣医師と相談してみてください。

じゃれ合う2匹のチワワ

まとめ

僧帽弁閉鎖不全症は、高齢の小型犬に多く見られる心臓病です。
初期はほとんど症状が出ないことが多いため、進行してから発見されることも少なくありません。
しかし早期発見と適切な治療で進行を遅らせ、快適な生活を長く保つことが可能となります。
日常の愛犬のちょっとした変化に気を配り、定期的な健診を継続していくことが大切です。

当院は循環器の治療を強みにしています。
定期的な健康診断から、「心雑音を指摘されたけどどうしたらいいの?」などの相談までいつでも当院にご相談ください。

大阪府堺市の動物病院
つむら動物病院