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2025.07.14
こんにちは。獣医師の髙山泰輔です。
今回は【心臓病(僧帽弁閉鎖不全症)】のワンちゃんのお話です。
簡潔に、5分で大事なところだけお話しします。
1分しか時間がない方は、≪④安静時呼吸数測定方法≫と≪⑤安静時呼吸数と肺水腫の関係≫のところだけでもお読みいただけたらと思います。
ワンちゃんの心臓病で最も多い【僧帽弁閉鎖不全症】は、チワワ・トイプードル・ポメラニアン・ヨークシャーテリア・キャバリアなどの小型犬種に多いとされています。
僧帽弁閉鎖不全症は
(1)心臓の血液が逆流することで
(2)心臓から全身に血液を送り出すことが難しくなり
(3)血液循環が悪くなることで、肺に水が溜まる(=【肺水腫】)疾患です。
僧帽弁閉鎖不全症が進行し、肺水腫になるとワンちゃんは【呼吸困難】になります。
そして肺水腫による呼吸困難に対する治療が遅れると、身体に酸素が十分に行き渡らず、死に至ることがあります。
このように、肺水腫による呼吸困難は命の危険があるため、僧帽弁閉鎖不全症のワンちゃんは、病態に合わせて【1-6ヵ月毎の健診】を受けていただき、病気が進行していないかどうか定期的にチェックすることをおすすめしています。
基本的に、病院での定期健診(レントゲン検査・心臓超音波検査・血圧など)で病気の進行具合をチェックしていくのですが、病院での定期健診以外にも、自宅で病気の進行に気付けるポイントがあります。
それが【安静時呼吸数の測定】です。
(1) 安静時(=ワンちゃんが横になっている、または寝ている状態)に、呼吸数(息を吸って胸部が膨らみ、息を吐いて胸部がもとに戻ることを1回とカウントする)を15秒間数えます。(例:15秒間で4回)
(2) (1)で数えた数に「4」を掛けます(例:4回×4=1分間あたり16回)
このようにして安静時呼吸数を測定し、僧帽弁閉鎖不全症の症状が安定しているときの呼吸数を記録しておきます(安定していれば週2-3回でもOK)。
一般的に安静時呼吸数は1分間に40回以下が正常(30回以上は要注意)で、多くのワンちゃんでは1分間に20回位です。
ワンちゃんの安静時呼吸数がいつもと比較して増加してきたら、できる限り早く病院での検査を受けることをおすすめします。
2020年、僧帽弁閉鎖不全症と肺水腫に関する研究で、【肺水腫を発症する4ヵ月前から、安静時呼吸数の増加が認められる】という結果が発表されました。
おうちで定期的に安静時呼吸数を測定しておくことによって、いつもと比べて安静時呼吸数が増加してきている場合には、僧帽弁閉鎖不全症が進行している可能性があり、肺水腫が近づいてきている可能性がある、と判断することができます。
僧帽弁閉鎖不全症では、一度肺水腫を経験したワンちゃんの余命は(肺水腫になったことのないワンちゃんと比べて)短くなることが知られています。
また、肺水腫は致死率が比較的高い病態であり、治療を施しても命を落とす可能性があります。
いち早くワンちゃんの異常に気付くことができれば、肺水腫になる前に治療を強化することができ、肺水腫を避けられる可能性があります。
心臓は身体の外から見えないので、病気が進行しているのかどうかがわかりにくく、不安なことが多いと思います。
だからこそ、1分でできる健康管理、『安静時呼吸数の測定』を明日から、ぜひご自宅で実践してみてください。
このコラムについてご質問やご不明な点などがありましたら、診察時にお気軽にお尋ねください。
【参考文献】
*『つむら通信2024秋冬号』 https://tsumura-ah.jp/info/17681/)
**『僧帽弁閉鎖不全症の進行と安静時呼吸数の関係』Veterinary Internal Medicne - 2020 - Boswood - Temporal changes in clinical and radiographic variables in dogs with.pdf