2024.08.13

猫のデンタルケア

ネコちゃんにとってデンタルケアは、私たちと同様にとても大切なことです。この機会にネコちゃんのお口について知り、できることから少しずつ、デンタルケアを始めてみませんか?

猫の口の中の環境を知ろう

猫は虫歯になりにくいです。理由はいくつかあり、口の中がアルカリ性に傾いているため虫歯の原因菌が増えにくいことや歯の形が薄く尖っているため虫歯の原因菌が歯のくぼみに溜まることが少ないなどが挙げられます。

ただし、絶対にできないというわけではありません。

一方で、猫の口の中の環境がアルカリ性であるために歯石ができやすいとされています。歯に付着した歯垢は3日以内に石灰化し歯石へと変わります。さらに2週間以内に歯周炎につながる事が分かっています。2

猫のほとんどが歯のトラブルを抱えている⁉

2歳までの猫の約70%が何かしら歯周のトラブルを抱えていると言われています。2)

歯周病ってどんな病気?

歯周病とは口の中に溜まった食べ物のカスや細菌でできている歯垢(プラーク)により炎症が起こることで歯肉、靭帯や骨にまで炎症が起きている病気です。

猫には歯周病以外にも歯肉口内炎や歯牙吸収病巣(ネックリージョン)といわれる病気も多く、流涎がひどい、口臭がする、痛くてご飯が食べられないといった症状につながります。

また、歯周疾患は心臓病や肝臓病、腎臓病などといった他の全身の病気を引き起こす原因にもなると言われています。

あなたのネコちゃんのお口の中をチェックしてみよう

チェックするポイントは次のような点です。

  • 口臭がする
  • 歯がきれいな白色ではなく、汚れが付いているように見える
  • 歯肉が赤く腫れているような感じがある
  • 出血しているところがある
  • 涎が多くなった
  • グラグラしている歯がある
  • 顔が腫れたり、くしゃみ・鼻水がでている

下にいくほど歯周病が進行していると見られる症状です。もちろん上記の症状があっても歯周病以外の病気であることもあります。口の中が健康な場合、口臭はしません。口臭がするだけでも何か異常があるということなのです。

この項目のうち一つでも当てはまったら、病院でのケアが必要かもしれません。猫ちゃんのお口の状態を一度みせてください。

歯垢は歯磨きで落とせるため歯石になる前にケアすることが大切で、歯石になってしまうと自宅でのデンタルケアでは落とすことはできないため病院での治療が必要になってしまいます。

デンタルケアは病院の治療だけではうまくいくわけではなく治療すべき部分は治し、自宅でできるケアを飼い主さんに継続してもらうことが一番重要なのです。

どんなデンタルケアをすればよいの?

STEP1. 口や歯を触ってスキンシップ

デンタルケアをするにはお口や歯を触れることが前提となります。
お口や歯を触られるのが嫌いな子の場合、ほんの少し触れたらご褒美をあげる、というのをしばらく繰り返してみてください。慣れてきたらだんだん口の中に指を入れて歯も触れるようにしていきます。
前まで触らせてくれたのに最近嫌がるようになった、というのであれば口の中に違和感や痛みがある可能性もあります。嫌がるのが続くようであれば一度、病院に連れてきてあげてください。

STEP2. 歯磨きシートを使ってみる

STEP1ができたら、次は歯磨きシートを使ってみましょう。歯磨きシートは歯垢を効率よく取ることができます。使い方は歯磨きシートを指に巻き、歯をやさしくこすります。この場合も先ほどと同様、嫌がる子は少しでもできたら褒めておやつをあげる、これを繰り返してください。歯ブラシほどまんべんなく磨けるわけではありませんが、使ってみると歯垢がシートに付いてきますよ。

STEP3. いよいよ歯ブラシで歯磨きに挑戦

歯ブラシもご褒美を使いながら徐々に慣れさせてあげてください。色々なフレーバーの歯磨きジェルもあります。指サックのような形になっている歯ブラシもあるので、普通の歯ブラシでは上手くいかない場合におすすめです。
歯に対して45度の角度でブラシを当てるようなイメージで磨くことで、歯周ポケットに溜まった歯垢を除去できます。

歯ブラシ以外のものでケアしてみる

STEP1~3がうまくできないなどで歯磨きをするのが難しいこともありますよね。
そんな場合には、歯磨き効果があるおやつやフード、また、先ほど挙げた歯磨きシートや、飲み水に混ぜることで歯石が溜まりにくくする効果を持つ液体のサプリメントといったものもあります。

ホームケアの方法を簡単にお話ししましたが、ネコちゃんが嫌がったらすぐ止める、少しでもできたら褒める、ご褒美をあげることを心がけてみてください。嫌がらないことから徐々に慣れさせていく、というのが最大のポイントです。ネコちゃんもご家族も楽しく続けられるようなデンタルケアをすることでさらに絆が深まり、ネコちゃんが健康でいられる、それが一番大切だと考えています。

その子その子に合ったケアを一緒に探していきましょう。

当院では様々なデンタルケア商品を取り揃えています。是非チェックしてみてください。

参考文献

1)Fraster A. Hale, 2009. Can Vet J 50(12): 1301-1304
2)World Small Animal Veterinary Association Global Dental Guidelines 2020

画像提供:東京猫医療センター 服部幸先生

アーカイブ