2026.03.07

犬の肺高血圧症の治療に使う酸素室ってどんなもの?|犬の肺高血圧症とその治療について解説

愛犬が肺高血圧症と診断されると、聞きなれない病名に不安を感じる飼い主様も多いのではないでしょうか。
肺高血圧症は少し複雑な病態で、命にかかわる病気です。
肺高血圧症の治療の大きな柱となるのが、薬による治療と酸素室による治療です。

今回はそんな犬の肺高血圧症の治療のなかでも、特に酸素室について詳しく解説します。
ぜひ最後まで読んでいただき、肺高血圧症の治療に対する理解を深めましょう。

肺高血圧症とは

肺高血圧症とは、肺の動脈の血圧が何らかの原因により高くなっている病態を指します。
肺の役割は、呼吸により取り入れた酸素を血液に乗せることです。
全身に酸素を運んできた血液は、一度心臓に集められ、また酸素を受け取るために肺へ向かいます。
そして、酸素を受け取った血液は、全身へ酸素を行き届かせるためにポンプとなる心臓へ向かいます。
これを肺循環といい、血液に乗せた酸素を体に行き渡らせるために非常に重要な循環システムです。
肺高血圧症では、何らかの原因により肺の動脈の血圧が上昇することで、血液中に十分な酸素を取り込めなくなってしまいます。
体が酸素不足により苦しくなり、肺だけでなく心臓への負担がかかってしまうことが問題になります。

肺高血圧症の原因

犬の肺高血圧症では、何らかの基礎疾患が別にある二次性肺高血圧症がほとんどです。
二次性肺高血圧症の基礎疾患には、

  • 僧帽弁閉鎖不全症
  • 慢性気管支炎
  • 肺線維症
  • 気管虚脱
  • フィラリア症
  • 血栓症

などがあげられます。

肺高血圧症の症状

肺高血圧症は、初期段階では目立った症状は出ません。
しかし、病気が進行すると、

  • 疲れやすくなる
  • 呼吸が荒くなる
  • 咳が出る
  • おなかが張っている
  • 舌が紫色になる
  • 失神する
  • ゼーゼーという呼吸音がする

などがあります。
このようなサインが出ている場合には、犬の体は非常に苦しい状態になっています。
突然犬の状態が急変し、亡くなってしまうこともあるため、このようなサインに気が付いたらすぐに動物病院へ連れていきましょう。

散歩をする白い犬

肺高血圧症のとき、酸素室は有効?

残念ながら、肺高血圧症を完治させる治療法はありません。
病気の進行をなるべく遅らせ、苦しい状態を少しでも楽にしてあげることが治療の目的になります。
肺高血圧症により呼吸が苦しい状態の犬にとって、酸素室は非常に有効です。
酸素室は、大気中の酸素より濃度の高い酸素を充満させた部屋を指します。
部屋といっても、犬が入ることのできるサイズの箱で、密閉されている空間であれば犬用の酸素室ができます。

酸素室内では高濃度の酸素を呼吸に利用することで、より少ない呼吸数で効率的な呼吸が可能です。
人間も酸欠の状態になった時、酸素マスクを使いますよね。
常に酸欠のような状態の肺高血圧症の犬にとって酸素室は、楽に呼吸のできるシェルターのような存在です。
効率の良い呼吸は、興奮による酸欠を防ぐことを可能にし、失神の予防にも効果的です。

酸素室を設置する方法とは?

酸素室は肺高血圧症の犬にとって、呼吸が楽にできるとても有用な部屋です。
それでも、「酸素室なんてどうやって導入するの?」「家庭に設置することなんてできるの?」と疑問に思いますよね。
酸素室を利用するには、酸素濃縮器と密閉できるケージが必要です。

酸素濃縮器は、ご自宅で購入するか、ペット用のレンタルシステムもあります。
密閉できるケージは、専用のものを購入する方法だけでなく、お家にあるもので工夫されているご家族もいらっしゃいます。
特に環境が変わることに敏感な性格の犬の場合は、いつものケージの外側をビニールやカバーで覆う方が落ち着くことができる可能性が高いです。

クッションでくつろぐチワワ

酸素室を導入した際の注意点

酸素室は、犬にとって呼吸が楽になるシェルターのような場所ですが、ご家庭で導入するには、注意点もあります。

注意点①温度管理

酸素室は密閉された空間なので、熱がこもりやすいです。
特に肺高血圧症で呼吸が苦しくなっている犬にとって、暑さは大敵です。
暑い環境では、熱を放散するため呼吸が早くなるだけでなく、血管が拡張すると心臓に負担がかかります。

酸素室の中の温度が常に分かるように温度計を設置し、こまめに温度管理を行いましょう。
暑さが気になる場合は、冷感グッズや保冷剤を利用するのもいいかもしれません。

注意点②火気厳禁

酸素室では高濃度の酸素が常に充満しています。
酸素には、助燃性と言ってわずかな火気でも激しく燃やしてしまう性質があります。
そのため、酸素室の近くでストーブを使ったりタバコを吸ったりするのは火事の原因となるため、とても危険です。

酸素室を導入したら、お家でやって欲しいこと

酸素室を導入したらそれだけで終わり、というわけではありません。
酸素室の取り扱いと同時に、犬の様子もしっかり見守りましょう。

環境整備

肺高血圧症では、呼吸数を増やさないことが重要です。
ハァハァと早い呼吸は酸素を取り入れる効率が悪く、非常に苦しい状態を招く原因になります。
落ち着いた呼吸を維持するためには、「興奮させないこと」が重要です。
酸素室の導入で、環境の変化により落ち着かずに興奮してしまう犬もいます。
気持ちを落ち着かせるために酸素室の中にいるときも、ご家族のにおいのついたタオルやお気に入りのおもちゃを入れてあげると良いでしょう。

呼吸数のチェック

肺高血圧症の犬を飼っているご家族はぜひ、安静時の呼吸数のチェックを行いましょう。
愛犬が寝ているとき、胸の動きを確認してみてください。
呼吸のたびに胸が上下するのがわかるはずです。
1分間数えて胸が上下する回数が40回より大幅に多いと、呼吸が早くなっていると言えます。
呼吸が早い状態では、犬が苦しくなっている可能性があるので、病院をなるべく早く受診する指標となります。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
今回は犬の肺高血圧症について解説しました。
肺高血圧は犬が苦しくなってしまう病気ですが、酸素室を含めた環境整備などの適切な治療を行うことができれば、長く穏やかな時間を過ごせる子もたくさんいます。
愛犬が少しでも楽に過ごせる時間が増えるように、肺高血圧症の犬を飼っている方は、酸素室の利用を検討してみましょう。

当院では、肺高血圧症などの循環器疾患の診断と治療に力を入れております。
肺高血圧症の治療や酸素室の利用について詳しく知りたいという飼い主様はぜひ一度当院までご相談ください。

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