2025.12.21

犬の僧帽弁閉鎖不全症で処方される薬の種類とは?

聴診器を首にかける犬

「愛犬が僧帽弁閉鎖不全症と言われたけれど、どんな薬が処方されたかよく分からない」
「薬の種類や数が増えてきて、本当に全部必要なのか不安を感じている」
「長く飲み続けると言われた薬の副作用や、寿命への影響が心配」
このように感じている飼い主様も多いと思います。
犬の僧帽弁閉鎖不全症では、心臓の状態に合わせて、数種類の薬を組み合わせて治療することが一般的です。

今回は、犬の僧帽弁閉鎖不全症で、よく使われる薬の種類について説明します。
ぜひ最後までお読みいただき、愛犬が飲む薬への理解を深めていただけましたら幸いです。

犬の僧帽弁閉鎖不全症とは?

聴診器で心電図を表す様子

犬の僧帽弁閉鎖不全症は、心臓の左心房と左心室の間にある僧帽弁という「ふた」がうまく閉じなくなり、血液が逆流してしまう病気です。
主に小型犬や高齢犬に多い慢性の心臓病です。

僧帽弁閉鎖不全症の初期の症状は、心雑音だけで元気なこともあります。
病気が進行すると咳が増え、肺に水がたまる「肺水腫」という状態になることがあります。

治療には、薬で症状をコントロールする内科治療と、僧帽弁の手術による外科治療があります。
手術は対応できる施設が限られており、年齢や全身状態などから適応になる犬が多くはないというのが現状です。
そのため、現実的には多くの犬で、強心薬や利尿薬を用いた内科治療が治療の中心になります。

犬の僧帽弁閉鎖不全症で使われる薬の種類

上を見上げるキャバリア・キング・チャールズ・スパニエル

犬の僧帽弁閉鎖不全症の治療では、1種類の薬だけでなく、いくつかの薬を組み合わせて心臓の負担を減らしていくことが一般的です。
ここでは、治療の中心となる、

  • 強心薬
  • 利尿薬

の2つのグループについて説明します。

強心薬

強心薬は、弱ってきた心臓のポンプの力を助ける薬です。
心臓の筋肉がしっかり縮むようにサポートし、全身に血液を送りやすくします。

具体的な薬の一般名としては、「ピモベンダン」が挙げられます。
ピモベンダンなどの一部の薬には、血管を少し広げ、血液が流れやすくなることで心臓の負担を減らすねらいがあります。

海外では僧帽弁閉鎖不全症の犬を対象とした大規模な臨床試験が行われ、ピモベンダンによって心不全の発症を遅らせたり、生存期間を延ばしたりできたという結果が報告されています。
この結果を背景に、ピモベンダンは犬の僧帽弁閉鎖不全症の内科治療で代表的に用いられています。
強心薬は、症状が出る前の段階から使い始めることもあり、状態が安定しているあいだは長く飲み続けるケースが多い薬です。

利尿薬

利尿薬は、体の中の余分な水分をおしっことして外に出す薬です。
肺に水がたまる肺水腫や、お腹に水がたまる腹水があるときに、水分を減らして呼吸を楽にすることができます。

具体的な薬の一般名としては、「フロセミド」「トラセミド」などが挙げられます。
利尿薬が効きすぎると脱水や腎臓への負担につながり、逆に足りないと咳や呼吸の苦しさが続いてしまうことがあります。
そのため、尿や飲水量、呼吸の様子を見ながら、獣医師が慎重に量を調整する薬です。

飼い主様が知っておきたいポイント

飼い主の足の上で眠る犬

犬の僧帽弁閉鎖不全症で薬による治療を続けていると、細かな点で飼い主様が迷いやすくなります。

ここでは、よく戸惑いやすいポイントを整理してお伝えします。

薬が増えていくことが不安な飼い主様へ

薬が増えていくと、「病気が急に悪くなったのでは」と心配になる飼い主様は多いです。
犬の僧帽弁閉鎖不全症では、役割の違う薬を少しずつ組み合わせて使うことで、心臓の負担を分散させていくことが一般的です。

1つの薬だけをたくさん増やすよりも、働きの違う薬を組み合わせた方が、副作用をおさえながら症状をコントロールしやすい場合があります。
そのため、必ずしも病状が悪化したから薬が増えたというわけではなく、今の心臓の状態に合わせて調整しているということも多いです。

自己判断で中止してはいけない薬について

僧帽弁閉鎖不全症の薬の中には、自己判断で急にやめると危険が高くなるものがあります。
特に利尿薬を急にやめると、肺に水がたまりやすくなり、命に関わることもあります。
飼い主様の自己判断で薬をやめるのは控えましょう。

薬の飲み忘れや、飲んだあとに吐いてしまったら

基本的には、気づいた時点でどうするかを獣医師に相談することをおすすめします。
飲み忘れに気づいたときに、次の時間が近い場合は、2回分をまとめて与えない方が安全です。
動物病院に相談の際は、いつ、どの薬をどのくらい飲ませて、どのタイミングで吐いたのかをお伝えいただけますとスムーズです。

まとめ

犬の僧帽弁閉鎖不全症では、心臓を支えるために、強心薬、利尿薬という2つのグループの薬を組み合わせて使うことが一般的です。
ご自宅で数種類の薬を愛犬に飲ませるのは、とても大変ですよね。
飼い主様が毎日の投薬に向き合う中で、不安や戸惑いを覚えるのはごく自然なことです。

当院は循環器診療に力を入れております。
僧帽弁閉鎖不全症のお薬のことや今後の治療について不安な点があれば、いつでもご相談ください。

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